東京センチメンタル馬鹿野郎、初インタビュー!「音楽の力を信じたいので、いい曲をたくさん作ってたくさんの人に伝えていきたい」
東京センチメンタル馬鹿野郎(以下、センバカ)が、いよいよ8月21日に1stアルバム『センチメンタルビート!』を配信リリースする。2024年1月から毎月1曲ずつ配信されたシングル7曲に、新録の「パステルビート!」を加えた全8曲となる本作。ひとつの節目となるこのタイミングで、センバカとは一体どんなバンドなのか、そして本作の中身について掘り下げる、センバカ初インタビューを実施。バンドの成り立ちからアルバムに込めた想いまで赤裸々に語る貴重な機会であり、たすく(Vo/Gt)、Johnchil(Key/Cho)、傑(Ba)、GeeShee(Gt)というメンバー4人の仲の良さも伝わるインタビューとなった。
取材・文 ほしのん
東京センチメンタル馬鹿野郎はDJイベントから始まった
まずは自己紹介をお願いします。
ギターボーカルのたすくと申します。睡眠船というバンドもやっています。よろしくお願いします。
Johnchilです。キーボードとプログラミングを担当しています。一応リーダーってことで、いいでしょうかね。表向きに言ったのは初めてです(笑)
笑。
傑です。もともとPOLTAというバンドを十数年やっていまして。そこでできた繋がりからセンバカの発足時に誘われて、メンバーになりました。普段はベースを弾いたり、POLTAでは作詞作曲をしたり、センバカでもちょっと作詞作曲をしています。
ギターのGeeSheeと申します。よろしくお願いします。、20代から30代、40代といろんなバンドをやってきた中で、センバカの発起人の方と仲良くて。一緒に対バンもしていて、それが縁で今のメンバーと出会いました。バンドではギター担当で、ギターアレンジも考えています。
ありがとうございます。まずはバンド結成のいきさつについてお聞かせください。インパクトのある「東京センチメンタル馬鹿野郎」という名前の由来も気になります。
先ほどGeeSheeさんも言っていましたが、もともと、センバカの発起人ともいえるボーカリストがいました。彼がやっていたバンドのサポートメンバーで僕とGeeSheeさんが参加していたのですが、そのバンドは解散しちゃって。その彼がまた何か始めたいということで、僕とGeeSheeさんに声をかけてくれて新たなバンドを立上げたんです。イベントも月1回ぐらいでやりながら、バンドと両輪でやっていきたいっていう話があって、そのタイミングで、彼と長い付き合いのあったJohnchilさんも加入しました。活動を始めるにあたり、バンド名より先にイベント名を考えることになったんですよね。彼が曲の中でよく「東京」っていう単語を使っていたのと、センチメンタル過剰というか、センチメンタル狂、みたいな一面があったので、〇〇バカのノリでセンチメンタル馬鹿野郎、をつけて「東京センチメンタル馬鹿野郎」に決まりました。
「東京センチメンタル馬鹿野郎」は、もともとイベント名だったんですね。発起人をイメージして付けた名前というのも、今はその方がバンドにいないことを考えると、なんだか面白いです笑。
渋谷にEdgeEndっていう老舗のロックBARがあって、2019年にそこで「東京センチメンタル馬鹿野郎」のイベントを始めて。DJをやったり、アコースティックライブやったりする中で、傑くんとGeeSheeさん、そして僕の3人は気が合うっていうことで、そこからバンドとしても活動をスタートさせました。メンバーそれぞれバンド経験があったんですけど、いい感じにコミュニティを作って盛り上げていく、楽しくやっていこうみたいなのが始まりで。音楽を中心に遊べる場を作ろうということでイベントを続けていく中で、コロナ禍が明けて。この3人にボーカルをフィーチャーして、もうちょっと本格的にやっていきたいなと思ったときに、最初に名前が挙がったのが、このイベントに出てくれていた、たすくだったんです。
よく一緒に飲んでました笑。
同じコミュニティの飲み仲間で笑、それでちょっと合わせてみたらハマりが良かったんで、一緒にやろうと誘った感じです。
僕は別のバンド(睡眠船)をやっていたんですけど、まだ出してない、どうにかしたいなあって思っていたポップな曲がいっぱいあったんで、それを出す機会にもなるかなって。
ちなみに、センバカにはドラムがいませんが、これには何か意図があったりするのでしょうか?
このメンバーでできることをやろう、というのがひとつ。あとはライブをやるときにドラムがいなくても、それがマイナスではなくて、いろんな場所でフレキシブルにやれるんじゃないか、という思いもありましたね。
具体的にはどのエリアで、どれくらいのペースで活動しているんでしょうか?
渋谷のEdgeEndを中心に、お誘いいただくライブに出演しながら、ライブやDJイベントをそれぞれ月1回やって、みたいなペースで活動しています。もともとDJのイベントからスタートしたので、当初はあまりライブをやっていませんでした。主にアコースティック形式のライブをしていたんですけど、「普通にライブをやっていきたいね」って話がどんどん出てきて。DJイベントを月1でやりながら、ライブの頻度も数ヵ月に1回から次第に2ヵ月に1回、そして月1回と増えていきました。
拠点としている渋谷EdgeEndは、この4人の体制になって初めてのイベントを行った会場なんですけど、おかげさまでその際ソールドアウトすることができまして。それ以来EdgeEndをベースにしながら、下北沢 mona recordsや、あとは高尾山だったり上野恩賜公園野外ステージでのフェスだったり、活動の幅がどんどん広がっていっている感じですね。
DJイベントから始まったとのことですが、そういったイベントは深夜、ミラーボールと爆音でノリノリの観客というイメージがあります。でもセンバカはサウンドもビジュアルも、穏やかで柔らかいですよね。私も何度かライブを拝見しましたが、山や公園というナチュラルな場所にも馴染んでいるように思いました。そのあたり、ご自身ではどう感じていますか?
山が好きだからかな笑。
性格がオラオラしてないから笑。徹夜して朝までとかはちょっときついし、DJイベントというより、お疲れ様的な飲み会のような雰囲気がありますね。
あとやっぱり声かなって思います。たすくくんの声には癒しの波長があるのかなと。
ありがとうございます笑。
どこで歌っていても嫌な感じがしないというか。初見の、音楽にあまり興味ない人たちが聴いても、いいなと感じてもらえる声だなって。そういうのもあるのかなって個人的には思います。
睡眠船とPOLTA、そしてセンバカとの違い
たすくさんは睡眠船、傑さんはPOLTAとそれぞれ別のバンドをやられていますが、センバカと取り組み方に違いなどはありますか?
POLTAはギターボーカルの尾苗さん(尾苗愛 Vo/Gt )とふたりでやっていて、半分くらいの楽曲で作詞作曲を担当しています。POLTAはふたりともそんなにアレンジが得意じゃないので、サポートメンバーにイメージを伝えながら一緒に作り上げていくことが多いんです。センバカは、みんながDTMの知識をしっかり持っていてアレンジもできるので、素材を投げたら面白く料理してくれる人がたくさんいるんですよ。POLTAの場合は「自分がやらなきゃ」という責任感もあって、そこもやりがいではあるんですけど、センバカの場合はちょっと無責任に「楽しいな」という感じですね。
僕も傑さんと似てるかな。睡眠船ってバンドは、自分が今のところ全部作詞作曲していて、いろんな曲を自由にやっています。センバカのほうはなんとなくポップスというテーマがあると思っています。洋楽も好きですけど、自分はまずメジャーなJ-POPを聴いて育ってもいて、それをいいなとも思っている部分もあって。傑さんの責任の話もあるけど、ふたつのバンドはちょっと違うスポーツって感じがします。あと、センバカはみんなが曲を作ってくれたりアレンジしてくれたりするから、ふたつのバンドを両立できているのかなと。
アルバムを通して聴いてもらえると、これがセンバカだよねっていう作品になっている
ここからは1stアルバム『センチメンタルビート!』について伺いたいと思います。今回、既発のシングル7曲に新録1曲を加えた全8曲でのリリースとなっていますが、そもそもこのアルバムをリリースすることになったきっかけを教えてください。
先ほどもみんなが言ってくれましたが、センバカは全員曲が書けるので、バリエーションが豊富なんです。毎月リリースしていた各曲それぞれ良いんですが、やっぱり全体の世界観をまとめて、点ではなく面で見せたいというのがあって。リリースタイミングも、実は昨年から決めていたんです。僕たちは年間スケジュールをきっちりと話し合っているバンドなので。じゃあ実際、リリースをどこのレコード会社にお願いしようかといろいろ模索する中で、ウルトラ・ヴァイヴで配信のディストリビューションをやってくださることが決まり、当初描いていたスケジュール通り、今回アルバムをリリースできることになりました。
「面で見せたい」というお話しがありましたが、アルバムの曲順については、どういう意図があっての並びになっているのでしょうか?
曲をリリースしつつライブもやっているので、ライブでのセットリストに近い曲並びだと思うんですよね。入口でアップテンポなもの、途中でじっくり聴かせる曲、そして後半また盛り上げるみたいな並びで。「パステルビート!」っていう曲を1曲目にした理由は、やっぱりリスナーの多くはまず1曲目を聴きますから、キャッチーな新曲を置きました。ただ、もともと私たちがイメージしている流れとしては、2曲目「花束」から順に8曲目「Plastic Merry Go Round(Album Mix)」まで聴いて、最後に「パステルビート!」があるという作りなんですけど。
本来、ライブではそういう曲順でやることが多いですね。
最後の曲を聴いたらぐるっと回ってまた1曲目、という流れで聴いていただくと、ライブで培った緩急を楽しんでいただけるかなと。別の言い方をすれば、DJ的な感じで、こういうテンポ感とムードで聴くとスムーズかなと思います。
DJイベント発のバンドらしい楽しみ方の提示ですね! ありがとうございます。では、このアルバムの聴きどころ、ここを聴いてほしい!というポイントを教えてください。
これまで毎月シングル的に、それぞれタイプのまったく違う曲を出してきていたので、「何やってるバンドなんだ?」みたいな感じがあるかもしれないんですけど、通して聴いてもらえると、これがセンバカだよねっていう作品になっているなとすごく思っています。アルバムの中でいろいろなことをやってるんだけど、なんか「らしい」ミュージックになってるなって。
それを言いたかった笑。
今GeeSheeさんが言った通り、一貫性がうまく出せてるといいかなっていうところですよね。
僕は、半分くらいの曲で歌詞を書いているので、ぜひ歌詞を味わってもらいたいなと思っています。
楽曲とは別に、傑くんがアルバムのアートワークやジャケットデザインをやっているので、そこも楽しんでほしいですね
たすくくんの指導のもと、怒られながら笑。
結局、最初のデザインがいい、とか言いながらね笑。
傑くんとたすくは仲良いんです。ふたりで江の島行ったり奥多摩行ったりして。
暇なんです、ふたりとも笑。
アウトドアな感じになるんですね。
そう。たすくくんがすごくアウトドアで、彼に引っ張られて。
バンドで遠足に行く感じ笑。センチメンタル遠足です。
ドラムレスであることの自由さ、スピード感がバンドの推進力に
続いては、楽曲の制作中のエピソードを伺いたいなと思うんですけど、こだわったポイントや苦労した部分などあればお聞かせいただけますか。
全般通して、苦労したっていう印象はあまりなかったですね。曲の大半は昨年にはできていて、リリースやライブを通して曲をブラッシュアップできたので、「楽しい」しかないです。あとは曲を作ってアレンジしてライブをやって、音源に向けてまたブラッシュアップっていう工程を毎回経るんですけど、ミックス・マスタリングをShnnoくんという方に全部やってもらってるんですね。だから音源という点では、最後の工程をShnnoくんという、ある種メンバーに近い人と密なコミュニケーションでできたので、非常に良いチーム感だなっていう印象です。
録音に関して言うと、一部ボーカルとかはスタジオのブースに入って録りつつ、基本はそれぞれが自宅で録音していて、セルフメイドで録った素材をミックスするっていう形をとってます。他のメンバーの工程が見えない、バラバラの作り方してるんですけど、結果的にちゃんとバンドサウンドになっているところは、こだわってるところかもしれないですね。
お互い見えないプレッシャーを感じながらですが笑、飲んだり語り合ったりしながらまとまっていく、これがバンドっていうやつですね。
さっき話に出た、ドラムがいないことの補足にもなるんですけど、結局ビートが生音に限られてないから、ジョン(Johnchil)さんがビートを作ったり、ドラムの打ち込みをしたりして、傑さんとかと一緒にリズムを固めてもらう、というスタイルでやることが多いんです。そこの自由度がある上でのウワモノ、ボーカルとかギターを自由に考えて入れられる。それもあって月1でリリースもできていたから、そのスピード感がバンドの推進力になっているのかなと。ドラムレスであることが、逆にいいほうに作用してるんじゃないかと感じてます。
いいこと言うね! それを言いたかった(2回目)笑。
Johnchilさんのプログラミング精度がどんどん上がっていったりとか、一筋縄でいかない曲が増えていったり、みたいなことがあったんで、ベーシストとしてはかなりしんどかったという笑。あとはミックスが楽しかったです。ミックスでは、どういうLOW感にするのか、ミッドレンジのところをどうするかとか、そういう話をするのは楽しかったですね。曲自体は、1曲目から全部すごく良いなと思ってるんですけど、録音物としては、制作を続ける中で、どんどん良くなってる印象があります。
楽曲は、制作した順にリリースされたんでしょうか?
最初に僕がみんなに投げたのは、4thシングルになる「夜のららら」です。それからジョンさんが作った3rdシングル「春の夜」。4人体制になって初めてやったのが、この2曲です。
1ヵ月で2曲出来たんですよ。
昨年のうちに何曲かできて。その中からとりあえず一発目として1月に「アンチクライマックス」を配信して、これでいいんじゃなかろうかっていう順番でリリースをした感じです。
最初に4人で楽曲制作した際の手ごたえはどうでした?
「夜のららら」と「春の夜」っていう最初の2曲をライブでやったときに、お客さんの反応も良かったし、たすくの歌声も良くて、やっぱりボーカルは大事だなってことで、満足感があった印象ですね。
たすくくんが最初に持ってきてくれた曲がすごく良かったんで、これ楽しそうだな、いいバンドになるだろうなと感じました。あとこのバンドには話し合いができる人しかいないので。
雑談ばっかりしてるような笑。
みんないろいろ気づいて、自走できるメンバーなので。いつの間にか良くなってるみたいな。それぞれがやるべきことをやってくれるので、ストレスがないんですね。
自立したチームワーク、素晴らしいですね!
手ごたえという点でひとつ挙げるとしたら「夜のららら」のとき、デモで骨組みはできてたんですけど、GeeSheeさんが入れたギターがめちゃくちゃ良くて結構びっくりして。これはいいバンドなんじゃないかって思ったんですよね。
それは僕も同じ感覚で。あのギターは、これいいんじゃないかなと思いながらも、ちょっと恐る恐る入れたんです。そうしたらみんなからのレスポンスがすごく良くて、この方向でいいんだって思えたという。
“人生賛歌”のメッセージを込めた、バンドの新たな代表曲「パステルビート!」
では、アルバム収録曲についていくつか質問します。最新曲の「パステルビート!」、聴かせていただきましたが、タイトルにふさわしい、本当にキラキラして爽やかなサウンドが気持ちよくて、音楽が持つ希望や生きる力を感じさせてくれる歌詞にもグッときてしまいました。今回、歌詞の部分がたすくさんと傑さんの共作という形になっていましたが、どういう流れで歌詞を作っていったんでしょうか?
もともとは一発、バンドの代表曲みたいのが欲しいねっていう話をしたときに、たすくくんが「ちょっと曲あるよ」って持ってきてくれたのが「パステルビート!」なんです。これを聴いてみんなが「ええ! 何この曲!」って盛り上がって。その時点で歌詞は全体の半分もなかったかな。何フレーズかあるくらいで。たすくくんから「ここはこういう歌詞にしたいんだよね」っていう話があって、それが、音楽が持つ希望とおっしゃっていた部分だと思いますが、そういった要望と曲の印象で僕が付け加えて書いたものを、たすくくんが添削するという流れで作りました。「これは歌いたくない」「ちょっとこういうのは…」って、すごい言われましたね笑。
何となく別れっぽくて、でも後ろ向きじゃなくポジティブな別れ、みたいなテーマをうまく歌にしたかったんですけど、それをなかなか具体的な歌詞にできなくて。傑さんに相談したらもう、ホイホイホイホイってやっていただいて笑。
さすが笑。
本当に言語化する力がすごいなって。
代表曲が欲しくて作ったとのことですが、この曲の歌詞で《さよならもはじめましても詰め込んで 歩いてくこの身体で歌っていく笑えないようなことも なんだかんだでかわして鳴らし続ける》と歌っている部分に、バンドとしての意気込みといいますか、このバンドでやっていくんだという決意が込められているように感じました。
そのあたりは傑さんが考えた歌詞ですね。僕の家に傑さんが来てくれて細かいところを打ち合わせして、最終的にすり合わせたんです。
素晴らしい作品で、アルバムの中心だと思ってます。歌詞を見たときに、この数年やってきたことが伝わってて嬉しいなっていう。これからもこのバンドを続けていけるし、言葉にはしないけど、共有できている感覚っていうのは嬉しくなりますね。ライブでやっていると自分もグッとくるところで。音楽っていうテーマがありますけど、おっしゃっていただいたような、人生賛歌と言いますか、生き続けていく、みたいな。やっぱりバンドとしていろんなバリエーションの曲があったんですけど、ひとつメッセージとして込められて良かったなと思います。
「温泉慕情」はメンバーの気さくな部分を伝えたい曲
続いて、個人的にとても気になっている「温泉慕情」についてお伺いします。
来ましたね笑。
この曲はちょっと異質と言いますか、ライブではめちゃくちゃ盛り上がる曲じゃないですか。《飛び込め(ダメ!) 泳げ(ダメ!)》の部分で、観客が「ダメ!」とコールしながら手で×印を作る掛け合いもあって、参加型の楽曲になっていますが、どういった意図で作られたんでしょうか?
センバカは、意外とムードのあるバンドなんですよね。これはさっきの歌詞の話と近いんですけど、自分以外の3人は“音の人”というか、ちゃんとその音楽をテンションとかムードで捉えて、発信できるタイプのミュージシャンなんです。でもライブの場合、ムードだけだとちょっとピリッとしないなと思うところがあって。3人はちゃんとしたミュージシャンではあるけれど、人として気さくなところもあって、それが伝わるような曲があるといいなと。この理由とは別に、当時、高尾山のライブが決まっていたので、そこでロックっぽくない、誰でもできるちょっとしたアクション付きのコール&レスポンスをやったら、みんな楽しいかなと思ったのもあります。
メンバーみんなが世の中的には控えめなキャラだと思うので、リスナーとコミュニケートするっていう意味でこういう曲があったほうが装置としていいというか。GeeSheeさんも「×」とかやってくれるわけだからね。
そうですね。高尾山ビアマウントという場所でライブをやったんですけど、その会場はビアガーデンで、当然お客さんたちも我々を聴く目的ではなくその場にいらっしゃってるんですね。でもみなさん「×」のアクションをやってくれてたんで、楽しんでもらえたのかな、すごいなと思いながら演奏していました。
狙い通りですね。あと結構ギターがガン!と入る曲がなかったんで、できればそういったトラディショナルなロック、馬鹿馬鹿しいやつがあったほうがいいなと思って。アレンジは何も伝えず、こんな感じって言っただけで、みんなすぐやってくれて。
傑くんからのオーダーはいつもイメージが明確なので、それを共有できれば音にするのは速いです。
4人にとっての「癒し」は、山・海・ひとり旅、そしてライブと飲みと温泉巡り
少し本筋から離れますが、「温泉慕情」には《誰が行っても癒される》という歌詞があります。みなさんにとっての癒しになることやものは何ですか?
うーん…(やや沈黙)。
…誰か、ありますか?
僕は、さっきも言いましたけど作曲や制作で家にいる時間も長くなりがちなので、以前からたまに山へ行っていて。それが癒しですね。
山、好きだよね。海も好きなんだよね.。
山と海。意外とアウトドア笑。
海で泳いだりするんですか?
泳がないです笑。海沿いがいいんです。でもやっぱりひとりで行くんだったら山が多いですね。
ホントになんにもない山に行ってるんですよ。誰も行かないような。
まあ、山によります笑。
僕はデカい音を出すのが一番なんです。だからライブが一番楽しい。
僕は…そうですね。バンド活動が癒しっていう感じで。だから困っちゃってることもあって。メンバーと一緒にいると楽しすぎるので、バンド活動が「癒し」ですね。
普通にみんなでよく飲むのと、ジョンさんが月1で、さっきもお話しした渋谷のEdgeEndで『まだ、名もなき夜』っていうDJイベントを開催していて、そこでみんなとよく会うんですよね。それ自体がストレス発散になってる感じがあります。
そうそう、そのイベントにメンバーもDJで出たりします。みんなと飲んで話すっていうのが大事。
僕はですね、ひとりで旅に出るのが好きでして。完全にひとりになる瞬間を作るっていうのが癒しですね。
それ、大事ですね。わかります。
自立してるんだよね。
たまに思い付いて、日帰りで意外にギリギリ行けるところまで行ったりするんですけど。富山に日帰りで行ってみたり。パッと行って夕方ぐらいに帰ってくるみたいな感じ。短い時間に凝縮して楽しんで帰ってくる、っていうのに癒されます。
そんなことやってるんだ、知らなかった。
言わないところがいいですね。
GeeSheeさんらしいね。
僕は温泉によく行きますね。金曜の夜から土曜にかけて行くのがすごくよくて。有料の特急は使わないけどグリーン車は使っていいというマイルールで。家路へと向かう人たちに交じって温泉行くのが結構好きです。
癒し、ありましたね、意外と笑。
みなさんにとっての癒しがあって良かったです笑。
POLTAとは違うアプローチができた「新宿」
では最後にもう1曲、「新宿」について伺います。もともとこの「新宿」は、傑さんがセンバカとは別に活動しているPOLTAの曲ですが、カバーしようと思ったきっかけはなんでしょう。
先ほど、POLTAとセンバカの違いの話をしましたが、POLTAではベース、あるいは基礎のアレンジを自分がやらなきゃいけないわけです。締め切りがある中で試行錯誤してアレンジしてみたんですが、違うパターンの可能性も感じていたんですよね。そんな思いを抱えているときにセンバカのほうで、何か曲はないかっていう話になって。じゃあ「新宿」をセンバカでやってみたらどうだろうと。そこでジョンさんに「新宿」のカバーをやりたいという話を持ちかけてみたら、「アレンジしようか?」と言ってくれたのでお願いしたいっていう流れですね。
センバカのアレンジとしてこだわったポイントはどこでしょう?
自分からお願いしたのは、落ちサビのところをEDMみたいにしたいなと。ドラム、キックが倍速になっていくやつを、すごくやりたくて。
生バンドと違ってドラムもプログラミング、という話をしましたが、傑くんから曲を受け取ったときに、歌メロもちゃんとしていたので、テーマとしてセンチメンタルさは残しながら、メロディアスな部分とハウスっぽさを意識して作りました。さらに言うと、イントロからキャッチーにしてリスナーに聴いてもらえる形を模索していたら、GeeSheeさんが素晴らしいリフを作ってくれて。そうして音源化のゴールに向けての有り様がみんなで共有できて、いい形でPOLTAの「新宿」とはちょっと違うアプローチができたかなって思います。
落ち込んでも、前を向けるように音楽が手を貸してくれることを、少しでも伝えられたら嬉しい
ではアルバムについて最後の質問です。みなさんにとってのアルバムのイチオシ曲を、ここが特にイチオシというところも含めて教えていただけないでしょうか。
では僕からいきますね。イチオシは「夜のららら」です。最初にたすくくんがデモを作ってきてくれて、合わせたっていうのが個人的に一番大きいかな。お互い家でデモもトラックも録っていて、ちょっと出してみるっていう手探りの状態でやった中で、すごく良い曲に化けた。これができたからセンバカっていけそうだなって手ごたえを感じられたので、思い入れが強いですね。あとはたすくくんの詞がすごく良い。抽象度が高くて。オオカミ、ビーバー、ヒナドリといった具合に、動物がいっぱい出てくる歌ってなかなかないので、すごい好きだなと。
僕は「アンチクライマックス」です。要は、盛り上がりがめっちゃあるとか、クライマックスがすごいあるわけじゃないけどなんかいいよね、みたいな、そういう歌詞で。バンドの雰囲気とも合ってるかなと思って。わりとこういうテンションの曲もやっていきたいという、ひとつの基準じゃないけど、そういう意味もあるかな。あと最初にシングルとして出したものから、ボーカルをミックスし直してアルバムMIXになっているんですけど、そのあたりブラッシュアップできてるかなっていうところで。
僕は「花束」。これは初めてメンバー全員で共作したような作品なんです。トラックは僕が作って、デモの形でみんなに聴いてもらったんですね。デモを踏まえながらメロはたすくがトラックに合わせて作ってくれたり、歌詞は傑くんが書いてくれたりして。やっぱりバンドの良さというか、曲が書けて詞が書けるメンバーがいる良さなんですけど、最初の「夜のららら」含め何曲か作って感じたのが、「メンバーにいろいろ頼めるな」と。だから全部を自分ひとりで作り上げなくても、一緒に、ある種作家的にお願いしても、ちゃんと曲が仕上がりそうだなという感触がしっかり形になった曲ですね。それと、トラックをベースにしたポップスみたいなものにトライしたかったので、そういうことがうまくいったなと。GeeSheeさんのワウが効いたカッティングも、メンバーなんだけどスタジオミュージシャン的なアプローチで入れてくれて。これからのセンバカに向けて可能性が広がった曲、という意味でもイチオシです。
自分は「パステルビート!」です。なんて言うか、結構びっくりしました。デモ聴いた時点で、ちょっと良い曲すぎて。結果的になんですが、今までのセンバカの曲に比べてかなり明確にメッセージがある形になったんですね。印象的なのは、たすくくんが持ってきた《音楽が壁を壊す瞬間はいつでも笑顔さ》っていう、このフレーズを出来れば入れたい、と。なので、そのフレーズから想起されるイメージを膨らましながら作詞していきました。落ち込むこともたくさんあるけど、ちゃんと前を向けるようにするために、音楽が手を貸してくれる。そんな気持ちを、自分の経験則からですけど、もう少しみんなにも伝えたい、伝えられたら嬉しいなって。なんとか歌詞にできたかな、と思っています。今一番聴いてもらいたい曲です。
この歌を聴いて泣きそうになった私には、しっかり伝わってます!
ちょっと補足になりますけど、たすくと傑くんのやり取りを見ていて、みんな自立しているというか、大人の部分があることでまとまるっていうのは非常にバンドとしてあるんですけど、曲制作を通じて意外とナイーブなところの交換というか、理解を深めていってるのがすごくいいなっていう印象でしたね。
では最後に、今後のバンドの展望や目標などをお聞かせください。
そうですね、日常の中にある音楽の仲間に入りたいっていうような気持ちがあって。なんて言うんでしょう、割り込んでいきたいというか…。
普遍的な音楽になりたい、みたいな?
うん、そういう気持ちはあるのかも。あとはお祭りとか、何か身近な催し事に参加していきたいっていう思いは強いです。
バンドとしては、ライブハウス以外のところでも結構ね、すごい楽しくやりたいなと思います。内向きの方向で言えば、目の前にある曲を作るっていうそれだけなんですけど、外向きの話で言ったら、演奏する場所なんかも広げていけたらいいなと。
レストランとか。
営業ができるかも。
そういうことができるには、どんな状況が必要かというところで、やっぱヒット曲を出したいっていうのはあります。聴いてもらえる前提のところに上がりたいっていうのがあって。
そうですね。曲はいろいろあって、そのそれぞれの曲自体推進力にはなっているかなと思っています。そこを踏まえながら、これからもしっかりやっていきたいなと。
1stアルバムをリリースするこのタイミングで気が早いかもしれませんが、来年には2ndアルバムのリリースや、ちょっと海外、アジアに行こうかなと考えています。曲とメンバーのキャラクターとコミュニティ、この3つが大事だと思ってやっているんですけど、そのバランスが今すごく良くて。敢えてそれを突き破るために、曲にフォーカスを当ててこれまで連続リリースをしてきたんですね。ここでひとつステージが上がることでキャラクターもより伝わるし、コミュニティも大きくなって、輪を広げられる。現状を見れば、まだまだやれることも多いし、そこを目指していきたいと思ってます。あとはやっぱり楽曲を作る。ちょっと言葉が難しいんですけど、「パステルビート!」もそうですが、音楽の力を信じたいという気持ちがあるので、いい曲を作ってたくさんの人に伝えていきたいですね。
INTERVIEWEE東京センチメンタル馬鹿野郎
それぞれに音楽活動を展開しているメンバーが、渋谷道玄坂で出会い、イベントや飲み会を通して意気投合、2023年より現体制での活動をスタート。
2023年8月、初の主催イベントを渋谷EdgeEndにて開催し、音源のリリースもない中ソールドアウトを達成。
Liveハウスでの演奏にとどまらず、上野恩賜公園野外ステージや、高尾山ビアマウントステージに出演するなど、クロスオーバーな活動を日夜拡大中。
INTERVIEWERほしのん
中央線沿線を愛するライター。SKA・PUNKからインストまで雑食の音楽好き。特技は方向音痴ともらい泣き。新人アーティスト発掘・発信プロジェクト「IMALAB」参加。IMALABサイトや個人ブログなどでライブレポート執筆、講談社コミックプラスとBOOK倶楽部にてコミック・書籍レビューも執筆中。